『坐骨神経痛とはどんな症状か?』まずはじめに知っておくべき基礎知識
お尻から太もも、ふくらはぎにかけて痛みや痺れが起こる坐骨神経痛。しかし、そもそも坐骨神経痛とはどのようなものなのでしょうか。そして、その坐骨神経痛の原因とはいったい何なのか?
今回は、「もしかしたら、坐骨神経痛かもしれない」と思った時に知っておきたい基礎的な知識をご紹介します。あわせて、意外と知られていない坐骨神経痛を治療する際の病院の選び方や、その検査内容についてもご説明していきます。
少々難しい言葉や漢字、専門用語なども出てきますが、正しい知識を知るためにもゆっくりと読み、少しずつでも理解していくといいでしょう。ぜひご覧ください。
坐骨神経痛とは?
坐骨神経痛は、病名ではなく症状です。お尻から足にかけての下半身に、痺れや痛みが起きるときの症状のことを言います。
坐骨神経痛は腰痛から発症して、徐々にお尻や太ももの裏のハムストリングスへ症状が現れ、ふくらはぎや足先へと広がっていきます。この痺れや痛みを放置していると、歩行障害、排尿障害、性機能障害が起こる可能性もあります。
坐骨神経痛の痛みの特徴についてですが、実はその痛みや症状そのものには個人差があります。ですので、はっきりと「坐骨神経痛の人にはこういう症状が現れる」と断言することは難しいのですが、主に下記の症状が出てくるとされています。
・いつも、お尻に痛みや痺れがある。
・太ももの裏側・外側、ふくらはぎ、かかとにかけて痛みや痺れがある。
・足が激しく痛み、歩くことが難しい。少し歩行することができても、休み休みでないと歩けない。
・立ったままでいると、足が痛くなってくる。そのまま立ち続けることができない。
・お尻が痛くて座れない
・腰を動かすと、すぐに痛みが出てくる。
・横になっていても、尻や足が痛くて休めない。
・痛みと痺れ以外に、足がだるい。もしくは、冷感(寒くないはずなのに、ひんやりとした不快な感覚がある)がある。
このような症状が出てきたら、坐骨神経痛の可能性が高いでしょう。
また、坐骨神経痛の痛みや症状には個人差があると言いましたが、痛みの程度に関しても個人差があります。ズキズキ痛みがあるけれど、なんとか生活できるという方もいれば、激痛のせいで普通の生活が送るのが難しいという人もいます。
片脚に痛みや痺れが出てくる方がほとんどですが、たまに両脚に症状がある患者さんもいるとされています。ですので、坐骨神経痛の患者さんの話を聞いて「症状が当てはまらないから、私は坐骨神経痛ではないのかもしれない」と自己診断をするのはやめ、必ず医師の診断を受けましょう。
・関連記事「坐骨神経痛のセルフチェック 10ポイントと3つの意外な症状とは?」
坐骨神経とは?
坐骨神経は、末梢神経(まっしょうしんけい)のなかで最も太くて長い神経で、下記の図のように腰から爪先まで伸びています。坐骨神経の太さは鉛筆ほどあり、腰から足先まで約1メートルの長さがあるとも言われています。
坐骨神経は、脊椎から出ている腰神経(ようしんけい)と仙骨神経(せんこつしんけい)によってできています。そして、その腰神経と仙骨神経をつなぐ、馬尾(ばび)と神経根に起きた障害が、坐骨神経の原因とされています。
ちなみに、馬尾は、第一腰椎のあたりでバラけて広がっていきます。下方に伸びているその様子が、「馬のしっぽに似ている」ことから、馬尾と呼ばれるようになりました。馬尾の役割はお尻や足を動かし、排尿・排便をコントロールするとても大切なものです。
坐骨神経には、太ももと足の筋肉を動かし、歩いたり体のバランスをとったりする役割があります。そのため、坐骨神経に障害が起きてしまうと、お尻、太もも、ふくらはぎに痛みや痺れが出やすくなるのです。
20~30代の坐骨神経痛の原因とは?
坐骨神経痛の原因は、年齢によって異なってきます。まずはじめに若い方のケースをご紹介します。
若い方の場合ですと以下の2つが多いでしょう。
(1)腰椎椎間板ヘルニア(ようついついかんばんへるにあ)
坐骨神経痛に苦しめられている若い方のほとんどが、腰椎椎間板ヘルニアが原因のようです。
腰椎椎間板ヘルニアは、腰椎に強い力や衝撃が加わり、椎間板があるべき位置からはみ出してしまうことが原因で発症するとされています。また、脊椎にできた小さい傷が、椎間板ヘルニアに転じることもあるそうです。
椎間板ヘルニアになると、腰や足に痛み・痺れ・麻痺などが出やすくなるでしょう。特に、前かがみになる動作やソファなどの柔らかい椅子に座った時に痛みが強く出るとされています。
そして、腰椎椎間板ヘルニアは急速に発症するという特徴があります。また、坐骨神経痛は、多くの場合は片側のみ発生するのですが、ヘルニアの症状の度合いによっては両側に発生することもあります。
腰椎椎間板ヘルニアの患者さんは20代~30代の方が多いでしょう。そのことから、椎間板ヘルニアからくる坐骨神経痛は若い方に起こりやすいと言われています。特に、長時間座り仕事をしている方、運転時間が長い方(職業がドライバーの方など)がなりやすい傾向にあります。
・関連記事「腰椎椎間板ヘルニアの症状とは?悪化すると運動障害や排尿・排便障害も…」
(2)梨状筋症候群(りじょうきんしょうこうぐん)
梨状筋症候群は、腰椎椎間板ヘルニアと異なり、ゆるやかに発生するという特徴を持っています。仕事や運動などで坐骨神経にストレスがかかることが原因で、痛みや痺れが起きるのです。
・関連記事「【梨状筋症候群の原因】スポーツ選手や女性に多い理由とは?」
高齢者の坐骨神経痛の原因とは?
高齢者の場合、主な原因は以下の3つとされています。
高齢者の主な3つの原因
(1)腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)
(2)変形性腰椎症(へんけいせいようついしょう)= 腰部変形性脊椎症(ようぶへんけいせいせきついしょう)
(3)帯状疱疹(たいじょうほうしん)
ですが、多くの高齢者の方の場合(1)の腰部脊柱管狭窄症にかかってしまい、坐骨神経痛が起こると言われています。
では、腰部脊柱管狭窄症とはどんな病気なのでしょうか。人間の腰部にある脊柱管は、実は老化によって損傷することがあります。この損傷の影響で、馬尾や神経根が圧迫されて腰部脊柱管狭窄症になり、坐骨神経痛になってしまうのです。
腰部脊柱管狭窄症は、体を後ろにそらす動作をすると痛みが強くなることがあります。腰椎椎間板ヘルニアでは前かがみの動作が痛みや痺れを生むとされていますが、腰部脊柱管狭窄症では前にかがんでも痛みは出にくいとされています。
腰部脊柱管狭窄症による坐骨神経痛を放置していると、間欠跛行(かんけつはこう)が起こります。これは、いわゆる歩行障害です。歩いていると足が痺れたり痛んだりしてしまい、しばらく休むとその症状が治まってくるという特徴があります。
・関連記事「坐骨神経痛が悪化すると間欠跛行、排尿障害、便秘の症状も出てくる?」
その他の原因
上記以外ですと、腫瘍(しゅよう)が原因で発症する場合もあります。たとえば子宮がんや前立腺がんでも、坐骨神経痛と似た痛みや痺れが起こる可能性があるのです。
また、足の血管が詰まってしまい起こる閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)も、坐骨神経痛と混同されることがあります。専門家によると、坐骨神経痛を訴える方の約10パーセントが、坐骨神経ではなく、他の病気が原因で痛みを感じているとされています。
「もしかして坐骨神経痛かも?」と思っても、病気が原因の可能性があります。まずは整形外科を受診し、痛みや痺れの原因を特定する必要があるでしょう。
坐骨神経痛になったら、どんな治療を受ける?
何らかの原因があって坐骨神経痛の症状が出ているので、まずは病院に行って坐骨神経痛が起こっている原因を調べてから治療をすることになります。
坐骨神経痛の治療と聞くと、「手術をしなければいけないのか…。」と不安になる方もいらっしゃいますが、重症の場合を除きすぐに手術になることはほぼありません。まずは正しい姿勢を心がけ、さらにストレッチや体操などを続けることで、その痛みを改善させることもできるのです。
・関連記事「坐骨神経痛の改善は正しい姿勢から!骨盤矯正椅子・ベルトを使おう」
坐骨神経痛の検査とは?
検査では問診、視診や触診を経て、神経学的検査と画像検査を行います。
神経学的検査には、足の痛みや痺れの原因がどこにあるのか調べる「ラセーグ・テスト」(別名:SLRテスト)や、神経の反射を調べる「反射検査」、足の筋力を調べる「従手筋力検査」があります。
画像検査では、X線検査やCT、MRIなどで痛みと痺れの原因を調べます。
坐骨神経痛でかかる病院とは?
坐骨神経痛の場合、整形外科を受診することになります。坐骨神経痛の治療には時間がかかりますので、信頼できる医師にかかることが肝心です。
信頼できる病院を探したい方は、こちら日本整形外科学会のホームページをご覧ください。そこに掲載されている、日本整形外科学会が認定している専門医にかかることをおすすめします。
病院に行っても症状がなかなか改善しない場合には、接骨院やカイロプラクティック、鍼灸院、マッサージなどの東洋医学の治療が効果的なケースもあるようです。
ですが、一時的な痛みを抑えるだけでは対処療法にしかなりません。これではすぐに症状も再発しますし、お金も時間も無駄になる可能性があります。やはり根本原因から改善できるよう、主治医に相談しましょう。
・関連記事「慢性腰痛の治療なら!整形外科、接骨院、カイロ、鍼灸院のどれがいい?」
正しい姿勢や生活習慣の見直しも大事!
坐骨神経痛は、いきなり手術をすることはほとんどありません。多くの患者さんは、薬やコルセット、赤外線、ホットパックといった治療に取り組みながら、改善を目指します。
ですが、そういった治療を受けながらも、姿勢が悪いままで過ごしている。もしくは、睡眠不足だったり、食生活が偏っていたりすると、坐骨神経痛も治りにくくなります。
早く痛みや痺れから解放されたいなら、自分の姿勢と生活を見直してみましょう。
正しい姿勢
肩こりや頭痛だけでなく、坐骨神経痛の原因にもなるのが「猫背」です。猫背になる原因はさまざまです。骨盤や股関節の歪み、重心を片方にかけて立つクセは、坐骨神経痛になりやすくなる原因のひとつです。
また、パソコンを長時間使用する人は、どうしても同じ姿勢をとり続けることになり、自然と猫背になりやすくなります。
スマートフォンのせいで姿勢が悪くなる方も増えました。スマートフォンをいじっていると、自然と体が前に倒れがちになり、肩も内側に入ってきます。これを「巻き肩」といいますが、この姿勢は当然、腰や背中に負担をかけます。
また、女性に多いのが「反り腰」です。反り腰になる方は、普段ヒールを履く機会が多い人、インナーマッスルが弱く骨盤が歪みがちな人が多いと言われています。
では、正しい姿勢のとりかたとはどんなものなのでしょうか。2ステップで簡単にできる方法をご紹介します。
■正しい姿勢のとりかた
【STEP1】まず、背筋を伸ばしてまっすぐに立ちます。そして、お尻は後ろに突き出さず、軽く引き締めます。あごも前に出さないで、軽く引くようにしましょう。
【STEP2】そして、背骨が『S字カーブ』をキープできるよう、常に意識しましょう。
・関連記事「猫背を矯正して坐骨神経痛を改善!簡単3ステップで正しい姿勢へ」
②定期的な運動
坐骨神経痛の改善には、筋肉のこわばりをほぐして血行を良くして、弱まっている体幹を回復させることが大事になってきます。そのためにも、毎日運動をしたほうがいいでしょう。
ウォーキングやエアロバイク、水中ウォーキングなどが、坐骨神経痛の方には向いているそうです。
ただし、自己流で運動を始めると、逆に痛みが強まるかもしれません。医師に内容やペースを相談してから始めるようにして下さい。
・関連記事「坐骨神経痛は、ヨガやストレッチなどの軽い運動で根本改善を目指そう!」
③規則正しい生活
ストレスや睡眠不足は、坐骨神経痛にとっても悪影響です。強いストレスや慢性的な睡眠不足は、自律神経を乱れさせます。すると、筋肉は硬くなり、関節の動きも悪くなります。背骨やその周辺の筋肉もこわばりやすくなるでしょう。そのせいで、坐骨神経痛にもなりやすくなります。
ストレスをためないようにすること、さらにぐっすり眠ることも、坐骨神経痛の改善には大切です。
理想は朝起きて夜は眠る「朝型」の生活ですが、ずっと夜型の生活をしてきた方が、無理やり早起きして生活をしても、逆にストレスがたまってしまいます。夜型の生活がどうしても体になじまないという方は、ストレスをためてまで朝型にする必要はありません。
ですが、ついつい夜更かしをしてしまうような人は、朝型生活を意識することをオススメします。
・関連記事「坐骨神経痛の原因はストレス?入浴と睡眠でリラックスして改善しよう」
④食生活の見直し
坐骨神経痛には、糖質、脂質、塩分が多い食べ物は厳禁です。
たとえば、砂糖がたっぷり入ったケーキやジュース、スナック菓子やファストフード、揚げ物です。また、体を冷やすような食べ物や飲み物も、良くありません。
■お酒とたばこ、カフェイン
また、アルコールもなるべく控えましょう。アルコールを飲むと、体がほてって血行が良くなる気がしますが、それはお酒を飲んだ直後だけ。時間が経つと、血管は収縮してしまい、血行も悪くなります。
「お酒をやめたら、薬の効きが良くなった」という声もあります。内服薬の効果を、アルコールが妨げることがあるのです。
さらに、カフェインの摂りすぎも、筋肉のこわばりを引き起こすことから、腰痛の原因になると言われています。そのため、コーヒーを避けるようにと指導している専門医もいるようです。
■良い食べ物とは?
それでは、坐骨神経痛にいい食べ物とは何でしょうか。おすすめは、筋肉の疲れをとって強くしてくれるビタミンB12や、ビタミンEが含まれる食べ物です。
ビタミンB12は、牛や鶏のレバー、カキ、サンマ、アサリなどに多く含まれています。ビタミンEはウナギやたらこ、アボガド、カボチャ、ナッツ類などに含まれるでしょう。
体を温めてくれる効果を期待するなら、ビタミンB12が豊富なあさりやしじみを入れた味噌汁を、定期的に食べるようにしてもいいですね。
■バランスの取れた食生活を!
何より大切なのは、栄養素が偏らないようにバランスを考えることです。野菜サラダだけ食べていても、坐骨神経痛は改善しません。バランスのとれた食事をとるように心がけましょう。
坐骨神経痛の解説動画
こちらは医学博士・医師で元NHKアナウンサーの吉田たかよしさんによる坐骨神経痛の解説動画です。
3分ほどの動画なのですぐに見ることができ、坐骨神経痛についてもわかりやすく理解できます。
こちらは分かりやすいアニメーションで坐骨神経痛を解説する動画です。併せてご覧ください。
おわりに
坐骨神経痛の症状には個人差があり、痛みや痺れの大小や感じ方、出方もそれぞれ違います。また、若い方は腰椎椎間板ヘルニア、年配の方は腰部脊柱管狭窄症が原因で座骨神経痛になりやすいとされていますが、それ以外の原因で発症することもあります。
坐骨神経痛だと思っていたら、別の病気が原因で痛みが出てしまっていることもありますので、坐骨神経痛かもしれないと思ったら、すぐに専門医にかかるようにしましょう。
坐骨神経痛の治療は長期にわたりますので、できるだけ信頼できる医師を選ぶといいでしょう。そのためにも、先ほどご紹介した日本整形外科学会のホームページをぜひ一度ご覧ください。
早期発見・早期治療の原則に基づき、適切な対処をしてください。1日でも早く健康的な生活を取り戻せるよう頑張りましょう。
続けて下記のページもチェック!
【坐骨神経痛の基礎知識】
【坐骨神経痛の治療法】
■坐骨神経痛を自分で治す!ストレッチ・ツボ押し・マッサージのやり方とは?
自分でできる腰痛改善法
「足から腰、太もも、お尻にかけての激痛、痺れがひどくて毎日辛い。」
「長時間歩くことができず、歩行困難な状態。」
「コルセットやサポーター、湿布、痛み止めの薬が手放せない。」
坐骨神経痛の痛み・痺れは一時的に良くなっても、再発しやすい症状ですので、
やはり根本改善をしていくべきだと思います。
「長期間マッサージをしているけど一向に良くならない。」
「湿布や痛み止めの薬を服用しているけど、あまり効果が感じられなくなってきた。」
これらは、一時的な効果しかないのが原因だと考えられます。
そこでぜひ一度お試しいただきたいのが、こちらの改善法です。
多数の体験談がございます。併せてご覧ください。